大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(ネ)2020号 判決

(一) 被控訴会社に営業課長として雇われていた菅原が、本件各約束手形を偽造したこと及び控訴人が昭和四三年七月一五日菅原の依頼により右各手形を割引き、これらを取得したことは当事者間に争いがない。

従って、菅原のした右手形偽造及び控訴人に対するその割引依頼が、その行為の外形からみて、使用者である被控訴人の事業の範囲に属すると認められる場合には、被控訴人は菅原の右行為に基づく損害について、相手方である控訴人に対し、賠償をする責任があるが、このような場合でも、行為の相手方である控訴人において、本件各手形が菅原の偽造によるものであることを知りながら、又は、重大な過失によってこのことを知らないで、右手形を取得するに至ったものであると認められるときは、控訴人は被控訴人に対し損害の賠償を求めることができないものであるところ、被控訴人は、控訴人には右の悪意ないし重過失があると主張するので、この点から判断をする。<中略>

ところで、前記(一)に述べたとおり、ある者(使用者)の被用者と取引をした相手方において、被用者の行為が、その職務権限内において適法に行なわれたものでないことを重大な過失によって知らなかった時は、相手方は、この事情を知っていた場合と同様に、使用者に対し、被用者の右行為による損害の賠償を求めることができないとされるのは、被用者と取引をした相手方において、わずかの注意を払いさえすれば、被用者の行為がその職務権限内において適法に行なわれたものでない事情を知ることができたのに、その程度の注意すら払わず、漫然これを職務権限内の行為と信ずることは、一般人に要求される注意義務に著しく違反するところであって、これは故意に準ずる程度の注意の欠缺であり、このような相手方には、公平の見地上全く保護を与えないことが相当と認められるからである(最高裁判所第二小法廷昭和四四年一一月二一日言渡判決、民集二三巻一一号二〇九七頁参照)。

(白石 川上 間中)

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